利雪

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 利雪

投稿日:2004年01月23日 10:18

 利雪という言葉を聞いたことがありますでしょうか。冬に降った雪をためて、夏場の冷房や空気浄化などに活かそうというものです。雪は厄介者扱いされることが多かったのですが、二酸化炭素(CO2)を排出しない安上がりなエネルギー源として、北国を中心に実用化が始まっています。

 北海道中央部に位置する美唄市には、世界初となる雪を冷房システムに応用した6階建てのマンションが建っています。降り積もった雪を冬場に建物脇の小屋に貯蔵して、夏場には不凍液を雪の冷気で冷やして、マンションの各階に循環させて室内を冷やしています。

 雪は環境負荷が小さく、自然に降ってくる元手のかからないエネルギー源です。10万トンの雪の場合、同量の氷を作り出す能力に換算すると、2千?入りのドラム缶6千本分の石油に相当します。雪を冷房などに活用できれば、これだけの石油を節約できることになります。この石油を燃やして排出される二酸化炭素の量は約3千5百?にもなります。

 雪をエネルギー源と考えれば日本は資源大国になります。国土の約52%に雪が降りますし、冬と夏の温度差が世界の中でも大きい地域なので、冷たい雪をエネルギーとして活用するのに向いています。豪雪地帯は日本の穀倉地帯とも重なりますので穀物貯蔵には最適のエネルギー源になりそうです。

 利雪のカギを握るのは貯蔵した雪が夏まで融けないように保存する工夫です。利雪研究の第一人者、室蘭工業大学の媚山助教授らは雪を山のように積み上げて、日光を遮る断熱材の研究をしています。もみ殻や間伐材などの入手しやすい材料を活用して、毎年実験を重ねた結果、高さ4?の雪山の表面をもみ殻などで30??ほど覆った場合、8月でも高さ2.5?の雪が残りました。こうした被服材を活用して、雪山の半分ほどを地下に埋めるような構造で保存すれば、高さ25?、幅100?、体積なら20万立方?程度の巨大な雪山を保存することが可能になります。

 また、雪は冷熱源以外にもいろいろと活用できそうで、ひとつは空気浄化フィルターです。雪の結晶構造は非常に複雑で、固めても内部に多数の穴があいた多孔質状になるため、この穴に空気を通すとホルムアルデヒドなどの化学物質や花粉などが除去できます。

 雪の結晶が形作る6本の手の間に温度や圧力などの条件を整えると、プロパンやメタンなどのガス分子を溜められます。深海底で発見されたハイドレートと同様の機能を雪に持たせることが可能になります。また、雪が融けてできる融雪水は超軟水でカルシウムやナトリウムなどのミネラルをほとんど含まないので、不純物を含まない超純水づくりなど、雪の利用に関心が高まっています。



https://www.lifestyle.co.jp/2004/01/post_114.html
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