NPO法人「桐ささやかな植樹祭」

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 NPO法人「桐ささやかな植樹祭」

投稿日:2009年04月30日 09:00

 皆様のご協力で「桐、ささやかな植樹祭」が特定非営利活動(NPO)法
人になりました。

 私が最初に桐の苗木を植えたのは1993年2月山東省の農村でした。それま
で海外の木材買付を業としていましたが、自然破壊に気がつき「中国から日
本に吹いてくる西風を少しでもきれいにしたい」という思いを込め、毎年少
しづつ桐の植林を行ってきました。

 途中500年に一度の洪水に見舞われたこと、契約した土地に植えた桐苗木
を中国政府から無許可という理由でいきなり全て切り倒されたこと、紆余曲
折があっての16年目、最初に植えた桐は「桐のベッド」になりました。また
その翌年に植えた桐は「桐のまくら」の試作に、1996年に植えた桐は「桐の
床」になりました。お陰様で、中国にも植林を通じた友人が増え、2008年に
は中国各地に2万本の桐を植林することができました。

 この16年間、木材から見ても中国は大きく変わりました。急激な経済成長
で中国国内の建築用合板の需要が急増し、頼みのインドネシア、マレーシア
に木が無くなった為、中国は自国での合板製造を余儀なくされました。その
ため空地および伐採後の土地を全て合板製造に適したポプラの木で植え尽く
しました。ご多分に漏れず、桐の伐採跡地も全てポプラ林に代わっていきま
した。

 ナラやタモの広葉樹は高価で売れますが、成長に40-50年の歳月がかかり、
経済至上主義の現在では見向きもされなくなりました。桐は10年で成長し高
価な値を付けるため農民にも喜ばれていましたが、育てる手間がかかりまし
た。一方ポプラは高価な木ではありませんが、3年経つと合板用材として換
金できて、手間も比較的かからないため、今や中国の農村は早期換金目的で、
もやし畑のようなポプラ林一色です。そのポプラも、日本の杉や松の単一樹
種植林のように、木材の価格急落が始まっています。

 桐は中国から鳳凰の宿る木として日本に伝来しました。日本では皇室の紋
として、また武家の紋として、五七の桐、五三の桐が家紋となり、現在でも
内閣総理大臣賞、500円玉などに桐が用いられています。シルクロードロー
ラン3000年の古の遺跡から発掘された琴の胴も桐でした。2万キロと数世紀
の旅を終えて日本に辿り着いた琴は、やはり日本でも桐材で作られ、日本が
世界に誇る琴の音色を現代に響かせているのです。その琴を作れるだけの桐
の木は、日本国内にわずか40本しか残っていない危機的現状を皆さんはご存
じでしょうか。

 戦前戦後、広島、新潟、茨城以北の東北では桐の植林が盛んに行われ、桐
の防虫、耐火、調湿、軽量、木目美を活かした産業・文化が花盛りでした。
しかし戦後日本の山は荒廃し、その復興のためには馬の鼻先に人参をぶら下
げてでも早急な復興が必要でした。農林省は1反24本の桐の植林に対して補
助金を出すと対策を打ち出しました。

 従来桐は1反15-17本の栽培が常で、自然の恵みと調和を取りながら行わ
れてきました。24本も植えてしまったら木と木が土地の養分を取り合い十分
な成育ができなくなってしまいます。一時期、新鋭の技術者たちが農薬と肥
料を大量に投入しましたので、桐の成長は絶頂に達しました。しかし、農薬
肥料に助けられ自立自己防衛力を失った桐の木は、病気やウイルスで萎え、
立ち枯れが続出しました。

 その後海外から不当に安価な木材が輸入され、それらの産地を壊滅的価格
破壊においやり、今でも桐の植林を続けているのは福島県会津三島地区だけ
になってしまいました。現在三島地区では昭和30年に5万本あった桐が5千
本に減り、琴を作れる古老の桐も40本になってしまいました。そして、日本
国内で桐の苗木を生産している林業家は、わずか2人だけです。

 今まで中国、ベトナムで環境保護および地元産業の両立を目指し、また桐
の育林技術を子どもたちへ指導し、ストリートチルドレンを出さない社会づ
くりを目的に桐の植林活動を続けてきた「桐ささやかな植樹祭」では、この
日本の桐の危機的状況を改善すべく資金を集めて、2008年会津三島地区の山
に5反を開墾し、2009年春66本の桐の植林を行える運びとなりました。2007
年会津桐の母樹から種を採取し発芽させた桐の苗が2mまで成長し、2009年
5月の植樹祭を今か今かと待っています。

 日本の農村風景の中、いつもその傍らにあった桐の木。葉が大きく、成長
スピードが速いことから、地球中緯度地方で最もCO2吸収固定のスピード
が速いことも証明されました。多くの方に桐の植林、育林体験を通じて広葉
樹の育て方を知っていただき、世界中で不足する広葉樹の植林に、是非ご参
加いただければ幸いです。日本国内で1本の桐を20年で育て上げるには10万
円の費用がかかります。日本の桐再生復興のために皆様の温かいご支援ご協
力をお願い申し上げます。

 NPO法人「桐ささやかな植樹祭」の理事には、桐博士として森林科学研
究所で桐の調査研究を長く続けられ、退官後も桐一筋に研鑽を重ねられてき
た80代の飯塚三男氏をはじめ、医療の現場でご活躍の医師の方々が在籍して
います。また、10本の桐植林費用のご寄付をいただいた方へは、岩手県花巻
市で桐の能面作りをされてきた畠山耕佐氏の能面を進呈しています。

 NPO法人「桐ささやかな植樹祭」 理事長 八木隆太



https://www.lifestyle.co.jp/2009/04/post_313.html
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