奉納 第二十二回「八ヶ岳薪能」

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 奉納 第二十二回「八ヶ岳薪能」

投稿日:2012年07月27日 09:00

■能 俊寛 しゅんかん 観世清和

 平家打倒のクーデター計画が漏れ、鬼界島に流された三人。硫黄の燃える
鬼が済むような薩摩潟の孤島である。首謀者の息子である丹波少尉成経と、
平判官康頼は、信心する熊野の神々を祀って帰国の祈願に余念がない。僧で
ありながら俊寛は、それを白眼視して加わろうとしない。

 平清盛は、娘の徳子を天皇家にいれ、ひたすら皇子誕生を祈っている。懐
妊の中宮も、平家への怨念が災いして安産もおぼつかない。清盛はさまざま
な特赦を命じ、鬼界島にも赦免の使いがたつ。

 車座になって身の上を嘆き、人間らしい心を持てるのも限界かというとこ
ろに、赦免状がもたらされる。しかし、俊寛ひとり、名前がなかった。傲岸
な人間が、極限状態でいかにくずおれていくか。

 歌舞伎の俊寛は、少将の現地妻を舟に乗せるため、赦免使いの1人を切っ
てまで自らの意思で島に残るのだが、「思い切って凡夫心」と、去りゆく舟
に激しい演技を見せる。能の抑制された演技が、この悲劇をいかに深くえぐ
るか。観世宗家の心理劇に、期待の集まるところである。

■狂言 柑子 こうじ 野村萬斎

 酒宴の土産にみごとな三つ成りの柑子を貰った主人。しかしすでに蜜柑は
供をしていた太郎冠者の腹の中へ納まっている。

 言葉の洒落で主人を言いくるめようと太郎冠者。槍の穂先に結び付けて帰
る途中、ひとつが落ちてころがったのを、「好事(柑子)門を出ず」と呼びか
けるなど、話術の面白さに賭けられた狂言である。しかも、最後のひとつの
言い訳に、なんと俊寛が引き合いに出され、平家の根拠地、六波羅を「腹」
に言いかける。

 なお三つ成り果実はめでたいものとされた。野村萬斎の洒脱な演技を楽し
む、この日の能と照応する選曲。

■能 船弁慶 ふなべんけい 坂口貴信 清水義也

 かつての武勲はどこへやら、都落ちの義経一行。西国の船宿に着く。見え
隠れに後を慕う静。この危急の時にふさわしからずと、義経に諫言した弁慶
は、静に都へ戻るよう説得するが、静は譲らない。義経直々の言葉に、静は
けなげにも別れの宴に立って舞う。静は白拍子、当時随一の舞姫であった。

 平穏に見えた船旅も、たちまち嵐となり、平家の怨霊が襲いかかる。能で
は大人のはずの義経を、子方に演じさせる習いである。凛然と響くボーイソ
プラノの効果もある。

 今年の八ヶ岳の主張は、内弟子として観世宗家の育て上げた俊英の競演に
ある。平知盛の亡霊に清水義也、静に坂口貴信。「俊寛」のツレの角幸ニ郎、
木月宣行。弁慶は福王流の若宗家、福王和幸。大役の船頭に野村萬斎。若い
気迫の火花が散る。

 なお、「俊寛」も「船弁慶」も同じ舟の作り物が出る。能の演出の「静」
と「動」を対比させる、これも今年の狙いである。

◆奉納  第22回「八ヶ岳薪能」

 神事  清祓の儀 宮司 坂田安儀
 解説  能楽評論家   増田正造
 能   俊寛      観世清和
 狂言  柑子      野村萬斎
 神事  篝火点火の儀  神  職
 能   船弁慶     坂口貴信 清水義也

 日 時:平成24年8月3日(金曜日)開場 15:30 開演 16:30

 協賛金:一万円(全席指定)

 会 場:身曾岐神社 能楽殿    0551-36-3000
     山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3401 
     JR中央線→小淵沢駅下車(タクシー5分)
     中央自動車道→小淵沢I.C.より車で5分

 申込先:八ヶ岳薪能実行委員会 03-3568-3229
     http://www.misogi.jp/takiginoh.html



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