遺伝子組み換え

ライフスタイル総合研究所



 遺伝子組み換え

投稿日:2009年01月07日 09:00

 食料やエネルギーの世界的な不足を背景に遺伝子組み換え作物に注目が集
まっています。今までは害虫への耐性を高めたり、病気や気候変動に強い大
豆やトウモロコシなどの作り手である農家の負担を減らす目的のものばかり
でした。最近は栄養や薬の成分を加えて消費者の利点を訴える次世代型の開
発が進んでいます。

 現在、流通する遺伝子組み換え作物は除草剤に強かったり、害虫に抵抗性
を持ったりした大豆やトウモロコシが主流です。さらに干ばつなど環境変化
に強い品種の実用化が見込まれています。世界の栽培面積は2007年で1億14
30万?に達していて、過去10年間で10倍に増えています。これまでは作り手
である農家を助けるタイプのものばかりでしたが、安全性に関して消費者は
根強い不安感をもっています。

 北海道の産業技術総合研究所で開発している遺伝子組み換え技術により、
イヌの歯周病を治す効果がある遺伝子を組み込んだイチゴを水耕栽培してい
ます。水や空気を外部に漏らさないだけではなく、気温や湿度、風量や風速
などの24時間クリーンな条件下で厳重に管理されています。

 イチゴをそのまま食べるのではなく、凍結乾燥してから粉末状に加工しま
す。さらに紫外線を当てて遺伝子を完全に壊し、遺伝子が外部に漏れないよ
うに安全性を高めます。植物で薬の成分をつくる場合と採算効率を比較する
と、化学合成する場合に比べてコストは100分の1ぐらいです。

 また、東京大学のグループがアルツハイマー病を防ぐコメの研究をしてい
ます。アルツハイマー病の原因物質といわれるタンパク質のアミロイドベー
タを作る遺伝子を組み換えたコメを炊いて食べることにより、体内にアミロ
イドベータの抗体をつくります。ワクチンと同じ効果で発病を防ぐことが狙
いです。

 コメに先駆けてこのタンパク質を含むピーマンを作ってマウスに与えたと
ころ、効果がありました。アミロイドベータを体内に注射で投与をすると副
作用を起こすことがあります。しかし、コメにはタンパク質を安定的に保っ
ておく性質がありますので、胃酸でも壊れにくく腸内でゆっくり吸収されま
す。

 他に次世代型の先駆けとして、ビタミンAを大量に含んだゴールデンライ
スが開発されています。発展途上国でのビタミンA欠乏症を解消するのが目
的です。花粉症の症状緩和をねらったコメの研究も行われています。

 しかし、実用化には薬と同じように効果を調べる臨床実験が必要で、膨大
な開発コストが課題になります。また、国際的には、遺伝子組み換え作物の
価値を見直す動きがある一方、口に入るものですから安全性を不安視する声
も強くありますので、消費者に受けいれられるかどうか、導入を巡る議論が
起こりそうです。



https://www.lifestyle.co.jp/2009/01/post_287.html
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