iPS細胞

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 iPS細胞

投稿日:2013年02月26日 09:00

 話題の「iPS細胞」で、2012年のノーベル生理学・医学賞を京都大学の
山中伸弥教授が受賞しました。受賞理由は「成熟した細胞を、多様性をもつ
状態に初期化できることの発見」でした。専門家が生物学の常識を覆すと称
え、ノーベル賞の選考委員らは私たちの理解に革命を起こしたと評しました。

 iPS細胞とは、人工多能性細胞(induced pluripotent stem cell)の
略で、人間の皮膚などの体細胞に極小数の遺伝子を導入して、数週間培養す
ると臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する多能性幹細胞に変化
する細胞です。

 生命の源である受精卵が分裂を始め、皮膚や神経、心臓などに成熟してい
き、成熟した後は後戻りしないと生物学で教わりましたが、この常識が大き
く揺らぎ始めたのが初期化の発見でした。

 初期化とは細胞の過去をいったん消去して、様々な細胞に育つ受精卵のよ
うな状態に戻す操作です。同時受賞した英国のジョン・ガードン博士が1962
年にオタマジャクシの腸の細胞から核を取り出して、核を除いたカエルの未
受精卵に移植した研究が可能性を開きました。いったん腸にまで育った細胞
の核でも初期化し、卵をかえすとカエルのクローンができました。1996年に
英国で体の細胞の核を卵子に移植すると初期化し、哺乳類初のクローン羊の
ドリーが誕生したことは有名です。

 人の細胞には約20200個の遺伝子が備わっていますが、働く順番や時期が
決まっていて、時間経過により細胞の状態が変化します。一つの受精卵が組
織のもとになる細胞(幹細胞)などに分かれますが、このころは万能性や多
能性が備わっています。皮膚や神経、心臓などに行き着いた後は、増殖や老
化はしても別の組織や臓器には変化しません。

 2006年京都で開かれた国際学会で山中教授が、マウスの皮膚からとった細
胞に4種類の遺伝子を入れたら、あらゆる細胞に成長する能力を持ったと発
表し、その後、新種の細胞を心臓や肝臓細胞に育てた研究論文が米科学誌セ
ルに掲載され、大ニュースとして世界を駆けめぐり、2007年には人の皮膚で
も成功しました。

 初期化にかかわる遺伝子は「山中4因子」と呼ばれる「OCT3/4」「SOX2」
「K1f4」「c-myc」の4種類です。この4種類の遺伝子を使って、受精卵直
後に働いていた遺伝子を呼び覚ますと、遺伝子の封印が解け、大人の細胞が
受精卵のような状態のiPS細胞に変化します。

 iPS細胞は病気の原因解明や新しい薬の開発、細胞移植治療などの再生
医療への活用が期待されています。



https://www.lifestyle.co.jp/2013/02/post_626.html
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